2023年5月15日 生前贈与財産(暦年贈与)の相続財産への持ち戻しの取扱いが変わります!

令和5年度税制改正大綱(2022年12月政府発表)において、生前贈与に対する取扱いが変わります。「暦年贈与」は、基礎控除110万円の枠を利用して相続税の節税対策として広く活用されています。今回の改正は、令和6年1月1日以後発生する贈与から生前贈与加算の期間が、現行の3年から7年へと延長され相続対策にも影響が予想されます。

 

◆ 暦年贈与とは

 1月1日から12月31日までに受けた贈与額が110万円以下である場合、贈与税が発生しないという仕組みを利用した贈与の方法です。

 年間110万円までの贈与であれば、毎年非課税で財産を第3者へ移せるため、生前のうちに所有している財産を減らすことで、将来の相続税の負担を軽減させることができ相続税対策として活用されています。なお、110万円以下の対象となる贈与財産は金銭だけでなく、土地や建物といった不動産も含まれます。

 

◆ 生前贈与加算とは

 暦年贈与を利用していた贈与者が亡くなった場合の相続税を計算する際に、「相続開始前3年間」に贈与した財産について、相続財産への「持ち戻し」が行われることになっており、これを「生前贈与加算」と呼んでいます。

 今回の改正で、令和6年(2024年)1月1日以後発生の生前贈与から、持ち戻しの期間が3年から7年に延長されます。

 

◆ 持ち戻し期間の延長方法

 実際に影響を受け始めるのは、2028年の相続発生分からで、以下のように毎年1年ずつ延びていき、令和13年(2031年)の相続発生分から7年に完全移行します。

① 令和10年(2028年)の相続発生分:4年間分持ち戻し

② 令和11年(2029年)の相続発生分:5年間分持ち戻し

③ 令和12年(2030年)の相続発生分:6年間分持ち戻し

④ 令和13年(2031年)の相続発生分:7年間分持ち戻し

 

◆ 贈与は契約で成立する

 贈与は契約行為です。口約束でも成立しますが、贈与税の基礎控除を受けるためには、贈与契約書を交わしておくことをお勧めします。その際には以下の点も注意することが必要です。

① 預金通帳と印鑑は贈った相手に渡して自由に管理できるようにする

② 株式は贈与した相手の名義に変更する

③ 現金での贈与は銀行振り込みにして証拠を残しておく

 

◆ 贈与税の計算式

 贈与税とは個人(贈与者)から受けた財産を取得した者(受贈者)に課税される税金であり、年間に受けた贈与財産額から基礎控除額(110万円)を差し引き計算します。

贈与を受けた方は、その額に税率を乗じて算出した贈与税額を申告・納税することになります。

※贈与税計算式:【贈与税額=(年間に贈与を受けた財産-110万円)×税率】

贈与を受けたとしても110万円以下であれば非課税となるため、贈与税の申告・納税は不要です。

 

●贈与税の簡易税率表

 

 ◆ 暦年贈与の注意点

① 税務署から定期贈与と判断されないようにする。

 贈与する時期や金額等を変えて行うなどの対策が必要です。

 (定期贈与とは、定期的な給付を目的とする贈与のことで、一定期間、一定の金額を給付することを目的として贈与を行うことをいいます)

② 名義預金には注意が必要です。

 受贈者自身が口座管理(通帳・印鑑等)をできるようにしておくことが必要です。

 贈与する際は受贈者の口座へ振込し通帳に印字するなどの証拠を残しておく。

 

◆ まとめ

 暦年贈与を活用した相続対策としての財産移換制度が厳しくなりますが、早い時期から中期的な贈与計画を立てて実行することが大切になります。

 円満な相続を実現し、尚且つ相続税や贈与税を節税したいと誰もが願っていることですが、不安な場合には、専門家(FPなど)に相談することをお勧します。

 

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一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)  大庭和夫

 専門分野:

 ライフプラン設計、不動産運用設計、相続関係、年金関係

   主な資格:

   1級FP技能士、宅地建物取引士、損害保険募集人、日商簿記2級

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