「為替相場を読めるようになりたい」。こんな気持ちになったことはありませんか。誰もが望む夢ですが、相場を読む力(これを筆者は“相場力”と呼んでいます)を得ることは簡単なことではありません。しかし、その道に近付く方法はあります。筆者が編み出した「相場力養成3か月訓練法」です。求める世界(市場)に3か月間どっぷりつかり、ルールに従い毎日行動を積み上げていくことで、少なくともその市場(今回は為替相場の例)の変動パターンを習得し、相場の方向性を予想できるようになると考えています。今回はその方法を紹介します。
◆ 訓練のイメージ:上達ステージは突然やってくる
一言でいえば、上達したと感じる時は突然にやってくる、です。筆者のケースは英語の聞き取りでした。若い時、ニューヨーク支店勤務の時、着任時はほとんど聞き取れず話せずの状態で、最初は全く意味の分からない外国語でした。それが突然、単語・文章が明確に聞こえるようになったのです。霧が突然晴れた感覚でした。それがちょうど丸3ヶ月目。
読者の皆さんも「あー、そんな経験がある!」ではないでしょうか。いくら練習してもうまくならない、と思っていたら、突然うまくなった、と言う感覚です。英語だけでなく、スポーツ、芸術、文化など、どんな世界でも同じように思えます。いわゆるラーニングカーブは、「45度で上達するのでなく、かなりの期間技術の変化なく時間が進んでいったあと突然急上昇する」といったイメージです。3ヶ月で相場が見える技術を得る訓練法はこの経験から生まれました。その心構えは「どっぷりつかる姿勢」、そして用意するものは「チェックシート」(下図)です。ではさっそく始めましょう。
◆ 3か月間の行動手順
イ)要点:「三つの目」を使い分けて、1か月単位で観察から予想まで覚える。
ロ)データ:「ドル円時間別相場表」で検索し、好みの媒体を決める。
(例:Yahoo Japan Finance/ ドル円時系列)
時間帯は24時間(オセアニアから米国まで)とする。
ハ)月別訓練法
① 1か月目 虫の目(見る) 相場を記録し、値動きの種類を覚える
② 2か月目 魚の目(復習する) 前日の値動きの理由を確認する
③ 3ヶ月目 鳥の目(予習する) 変動要因の変化を読み、予想する
ニ)チェックシート(別添)
① 一日分を1シートに記入し、3ヶ月分を用意する
② 朝、一番に、前日の「4本値(始値、高値、安値、終値)」を記入する
③ 月ごとに、記録量や記入箇所を増やしていく
◆ 1ヶ月目:継続して相場を記録するクセをつける
① 最初の1か月は、決めた一定時刻の相場記録だけ集中する。回数を増やすなどを欲張らない。《時刻を気にするようになれば進歩》
② 時間は例えば、朝-海外終値、東京午前10時、夕方5時など自分の生活や仕事のパターンに合わせて決め、その時間を少なくとも1か月間は守り、実際の円相場を記録する 〔シート「実際」〕
③ 使用する相場は、上記で決めたデータソースを活用する。
④ 余裕があれば、徐々に他の時間(正午など)を加えていくが、最初から欲張らないで良い。
◆ 2ヶ月目:為替を取り巻く変動要因と因果関係を体で覚える
① 実際の為替相場と変動要因を毎日記入する。〔シート「実際」「要因」〕
《2か月目に入り、自然に「なぜこう動く?」と考えるようになる》
②「キーワード」や「キーパーソン」を無理やりでも探し出す
③ 東京市場の予想と検証を必ず一日1回行う
《これは、当てることを目的にしたものでなく、自分の感覚と市場の動きの違いのパターンを知るための作業です》
◆ 3ヶ月目:長期的な視点で相場予想を行う
① いよいよ相場を読むことに集中していく
② 相場予想を一日2回行う。
③ 朝にその日の東京市場のレンジ(高値・安値・終値)、夜に海外市場のレンジ(相場変動幅)を予想する〔シート「予想」〕
④ 実際と予想の違いの分析を必ず行う〔シート「実際」〕
◆ まとめ
一番大事なことは「相場を読めるようになりたいと思う強い意志」を持ち続けることです。
今はスマホでいつでもどこでも情報が手に入る時代ですが、最初からあれもこれも、と手を広げないことです。
毎日少しずつでいいのです。自分で紙に相場をつけてみると、自然に数字の感覚(ドルが高くなっているのか、安くなっているのか等)が体に染みついてきます。
いわばアナログ手法ですが、これがいいのです。知り合いにディーラーや専門家がいたら、時々その人から話を聞く、などもやってみてください。
まずはスタートしましょう。そして、「継続こそは力なり」です。3ヶ月間が終わった時(あるいは、途中で感じる人もいるかも知れませんが)、相場の流れを感じ、自然に予想ができる自分を発見できると思います。
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一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC) 小池 正一郎
専門分野:
金融資産運用設計(国際金融、外国為替、デリバティブ、富裕層向け)
主な資格:
CFP®・1級FP技能士
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