2021年7月15日 男も育児休業を取得する時代に!~正々堂々と育児休業を取得するために知っておきたいこと

 

 2021年6月。改正育児介護休業法が国会で成立しました。日本の育児休業の制度自体は、先進国の中でも特に手厚い内容ながら、男性の育児休業取得率は少ないといわれてきました。制度はあるのに取る人はないという矛盾を解決するための今回の改正。「男性が育児休業を取得するなんて。」と言わずに、この改正を機会に、育児休業を正々堂々と取得するための道筋を考えてみてはいかがでしょう。

 

◆ 育児休業の制度おさらい

 もともと、育児介護休業法は1995年6月に成立しています。原則として育児休業を取得できるのは、子どもが1歳になるまでですが、その後の改正で、保育園に加入できない場合などの理由があれば、1歳以降も育児休業が取得でき、最大2歳になるまで雇用保険の育児休業給付の対象となりました。その後、さらに、「パパママぷらす」という、夫婦で交代して育児休業を取得するという制度改正が行われ、夫婦で効率よく育児休業を取得するという仕組みが作られています。産前休業から考えると、健康保険からは出産手当金として給料の約67%が産前42日から産後56日間の給付がされ、さらに、雇用保険から育児休業給付が子どもが1歳になるまで。(保育園に加入できないとの理由があれば子どもが2歳になるまで)、最初の半年は67%、その後は50%支給されるのです。これが、会社を休業する場合の経済補填であり、日本が、先進国中、もっとも手厚いと言われる制度です。

 

◆ 改正されてどう変わる?

 2021年6月に決定した法改正の中で、最も大きい改正と言えるのは、「生まれた直後の時期に育児休業を柔軟に取得できる枠組みの創設」と、「原則として分割できなかった育児休業が分割して2回まで分割可能になる」、そして「従業員が1000人を超える大企業について育児休業の取得状況公表を義務付ける」という3点ではないでしょうか。子どもが生まれた直後は、子育てになれることがなかなかできず、苦労するものです。生まれた直後に夫婦で休業できれば安心につながるでしょう。さらに、労使協定を締結している場合に、労働者と事業主との個別同意により、事前に調整した上で休業中に就業することが可能となります。どうしても仕事が気になり、休みにくくなる男性の心理状態を少し緩和させることができる制度と言えるのではないでしょうか。次に、育児休業の分割ですが、これまで分割がまったくできなかったわけではありませんが、休業の開始日が決まっていました。1歳以降延長する場合には、1歳から1歳半までの休業初日、もしくは1歳半から2歳までの休業初日に休業せざるを得なかったところ、開始日を柔軟に決定できるという点がメリットと言えます。3つ目については、やはり、情報が公開されることで、「自分だけではない」と心強く感じることも多いでしょうし、公開されて「働きやすい企業」というイメージが定着すれば、学生へのアピールポイントになるかもしれません。

 

 

改正内容(出所:厚生労働省HP) 

 

◆ 共働き夫婦が行いたい、スムーズな育児休業の連携とは

 今回の改正はすぐ施行されるわけではありません。1番早い改正内容の施行日は令和4年4月1日です。ただ、既に令和3年も半分が過ぎました。子どもは授かりものですから、いつ産もうと思って計画的に産めるわけではありませんが、こういう制度を知っておくことで、子どもを育てながら働くという目標ができ、夫婦で子育てを乗り切りやすくなるでしょう。理想的な取得方法としては、以前の改正点であるパパ・ママ育休プラス(下記取得例。出所:厚生労働省HP)が参考になるでしょう。子どもが出生直後は、ママが産休を取得し、パパが育休を取得。その後ママは育休を取得し、パパは仕事に復帰します。その後、子どもの保育園が決まった段階で、その準備のためにパパが再度育児休業を取得するというのは理想的ではないでしょうか。今は、出産後も専業主婦にならずに働き続ける選択肢は決して珍しくはありません。男性が育児休業の取得をあきらめず、取得することが当たり前になれば、もっと子育てはしやすくなるでしょう。

  最後に注意点を申し上げます。実は、この改正育児・介護休業法には国会で24もの付帯決議がつけられています。「今回の出生時育児休業は、より高い水準になり、この仕組みがなくてもその水準を保つことができるようになった場合に見直すこと」や「労働者が育児休業中に就業した場合、その終業日数によっては社会保険料の免除が認められなくなり、想定外の経済的な負担が発生する可能性があることを周知徹底すること」など、かなり細かい点まで触れています。令和7年において30%という男性の育児休業取得率が達成できるかどうかは、わかりませんが、実務上今後も細かい取り扱いは出てくるでしょう。今後の通達や通知もぜひ気にしながら制度を利用していただきたいものです。

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)   當舎 緑 CFP®

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