2019年2月16日  被災者等の所得税の負担軽減 ~雑損控除について~

 

 確定申告の時期がきました。
 2018年は7月の西日本の豪雨、9月の北海道の震度6強の地震など、自然災害が多く発生しました。今号では、被災者の方々には是非知っておいていただきたい雑損控除について解説していきます。
 雑損控除は、災害、盗難または横領により、資産に損害を受けた場合や、災害に関連してやむを得ない支出(火災の後片付け費用など)をした場合に適用が受けられます。
 雑損控除の特徴などについてみていきましょう。

 

◆ 対象となる資産
 雑損控除の対象となる資産は、原則として、納税者本人または本人と生計を一にする配偶者、その他の親族(その年の総所得金額等が38万円以下の者に限る)が所有する、生活に通常必要な資産(自宅や家財など)に限られます。
したがって、生活に通常必要でない資産、たとえば、別荘などや、貴金属、書画、骨董など1個または1組の価額が30万円を超えるものなどは対象外となります。

 

◆損害の原因
 損害の原因は、「震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害」、「火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害」、「害虫などの生物による異常な災害」、「盗難」、「横領」に限られます。

 

◆控除額
 雑損控除は以下の①または②のいずれか多いほうが控除されます。
 ① 損失の金額(※1)-総所得金額等×10%
 ② 災害関連支出の金額(※2)-5万円
 (※1)損害金額-損害保険金などで補てんされる金額。
 (※2)火災の後片付け費用や損壊した家屋の取壊し費用などの現金支出額。

 

◆雑損失の繰越控除
 雑損控除額がその年の所得金額を上回った場合には、その上回った分を翌年以後最長3年間繰り越すことができます。これは雑損控除だけに認められているもので、雑損控除以外の所得控除合計額がその年の所得金額を上回ったとしても、その上回った分を翌年以後に繰り越すことはできません。

 

◆雑損控除を受けるための手続
 確定申告書に雑損控除に関する事項を記載するとともに、災害等に関連したやむを得ない支出の金額の領収を証する書類を添付するか、提示します。また、給与所得のある方は、このほかに給与所得の源泉徴収票(原本)を申告書に添付します。
手続の方法についての詳細は、所轄の税務署などにお尋ねください。

 雑損控除については、詐欺や恐喝の場合には適用が受けられないことなど、留意すべき点もあります。また、雑損控除とは別に、その年の所得金額の合計額が1,000万円以下の人が災害にあった場合、災害減免法による所得税の軽減免除もあります。雑損控除と災害減免法は納税者の選択によりどちらか有利な方法を選べる点もあわせて押さえておきましょう。

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)  左右木 伸也  AFP 

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