2020年11月1日  同一労働同一賃金。パート、アルバイトでも泣き寝入りをしてはいけないわけ

 

 2020年、新型コロナウィルス感染症の影響で、不景気な中、頑張っている企業もたくさんあります。その中で、やはりしわ寄せがいっていると思われるのは、パートやアルバイトなど、弱い立場の方々です。アルバイトで生活している学生や、子どもの教育費のために働いているパートさんなど、勤務先から、給料を下げられたり、やめさせられたり、そんな理不尽、どうせ仕方ない、正社員じゃないからと思っていませんか?実は、2020年4月1日に同一労働同一賃金のための法改正がされています。(中小企業は2021年4月1日の予定)今回はこの法改正をしっかりと理解し、給料や待遇について勤め先と交渉できるような知識を身につけましょう。

 

◆「同一労働同一賃金に関する法改正。なんでも正社員と同条件になるの?」

 おそらく、パートさんなど、非正規社員の方の一番の関心ごとは、この質問につきるのではないでしょうか。今回のこの法改正の目的としては、「同じ企業で働く正社員と短時間労働者、有期雇用労働者との間で、基本給や賞与、手当など、あらゆる待遇について不合理な差を設けることが禁止されます。」ということになっています。もし、不合理な差があれば、均衡な待遇(均等な待遇)の確保を図るための措置を講じなければならないのです。

 この待遇については、①職務内容 ②配置変更の範囲 ③その他の事情について吟味する必要があります。最終的には司法で判断されることになるのですが、ここで知っていただきたいのは、「パートだから」「総合職ではないから」という抽象的な言い方では、差別がある理由とはならないということです。通勤手当や皆勤手当などの手当についても、同一の働き方をしている正社員に対して支給されているのであれば、同様の手当は支払われなければなりません。役職に応じた相違がある場合には、その相違に応じた支給をしなければなりませんので、全く支給できないというわけではないのです。 

 

◆「就業規則、労働契約書を見直してみよう」

 原則として、労働条件は、契約によって成立します。最近、パートやアルバイトなどのSNSの拡散など、非正規社員の不祥事によって、企業が賠償責任を負う事件が続いていたことで、パートやアルバイトなどの労働契約書の中に、しっかりと賠償責任を織り込んで労働契約書を作っているところが増えてきましたが、何時から時間外なのか、いつが休日なのか、どの休日に対して休日手当が支払われるのか、などの詳細な労働条件については、口約束だったり、後で「シフト表渡すから」など、なし崩し的になっていたりと、条件をはっきりとわかっていないパート、アルバイトの方は多いでしょう。会社としては、迷惑がかかったときのために、とりあえず、労働契約書に署名押印をもらっておけばいいという風潮があるケースもあり、自分は非正規だからと諦めず、まずは、会社の就業規則や労働条件通知書、労働契約書などにおかしいところはないのか、はっきりと書いていないグレーゾーンの部分について確認してみることから始めてください。同一労働同一賃金と言っても、同じ仕事をしているから、全く同じ手当を付けなければならないというわけではありません。どのような手当が同一労働同一賃金の対象となるのか、知っておかないと交渉すらできません。

 

◆「できない、迷惑をかけるからと思わないことが大事」

 社会保険労務士という仕事柄、たくさんの労働者の相談をお受けします。その中で、もったいないなと思う時があります。せっかく働いているのに、勤務先の健康保険組合の給付や福利厚生などの受けられる恩恵ですら、会社に迷惑をかける、もしくはお手数おかけして申し訳ない、とおっしゃって使おうとしない方がいらっしゃるのです。今回の法改正である同一労働同一賃金を主張するのは、わがままではありません。仕事を正当に評価して賃金を支給する仕組みを作っていこうという意味での改正です。ポイントを具体的にお話ししておきます。まずは、基本給を同じにするのは、同じ仕事をするからという理由だけで、同一になるわけではありません。原則として、①能力または経験に応じて②業績または成果に応じて③勤続年数に応じての違いがあれば、同じである必要がありません。次に賞与ですが、賞与の目的をはっきりとしている会社はあまり多くありません。会社の業績に応じてなのか、それとも労働者の貢献度に応じてなのか、それによって支給されるかどうかが判断されます。正社員と同様の貢献をした場合には、貢献の度合いにつき、一定の支給をし、一定の違いがある場合には、その相違に応じた支給をしなければなりません。つまり、パートだからといって賞与を諦める必要はありません。正当な権利として請求をしていただきたいと思います。

 

 

 今年は、どうしても何かを諦めることが多くなっている一年だと思います。それは仕方がないことですが、パートだから、派遣だから、有期雇用だからと、その立場によって弱くなる必要はありません。経済の回復に2年かかるかという専門家もいれば、3年かかるという専門家もいます。今ある状況を楽しみつつ、いかに自分の持っているものを利用できるのか、ちゃんと自分の権利を知って、主張するところから始めてみてはいかがでしょう。 

 

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)   當舎 緑  社会保険労務士 行政書士 CFP®

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献するこ

とを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

  

 

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