2021年11月15日 介護付き有料老人ホーム「入居金0円」のからくり

  

80歳のA子さんが「介護付き有料老人ホーム」を選んだ理由とは。

FPとしてA子さんと一緒に検討しメリット・デメリットを整理した過程を、少しご紹介します。 

 

◆ 家族で話し合って、老人ホームを選択(相談事例)

 依頼者のMさんの相談は、母親のA子さん(80)は実家に一人住まいでした。子供たちはすでに独立し、A子さんが病気やケガで倒れたとき等には、子供たちが駆けつけていました。何かあったときの為に、防犯対策やセキュリティがしっかりした警備会社に入ってはいたのですが、健康に不安感が増してきたので、親子で話し合った結果、元気な内に「介護付きの老人ホーム」に入居するのが安心であることを相互に確認し納得しました。早速、老人ホーム探しを始め、近くにある数件を見学しました。

(老人用施設は多くありますが、その中で「自由に暮らせる」という点を重視し、入居ホームを選択されました。ここではその選択過程は省略します。)

 

◆ 有料老人ホームとお金の問題。「入居金0円」」のからくりとは?

  「入居金0円」とはどういうことなのか説明を聞きました。

有料老人ホームの入居金は、原則「契約時に一括」で支払います。その額は、数十万から数千万円という高額資金が必要となります。

しかし、それでは敷居が高いので、貯蓄額が減らない方法として「入居金が0円」の月払いプランを作り、「家賃の前払い制度」として入居の検討がしやすいように用意されたプランです。

ホーム側は、「入居金は一括払い」を説明当初には進めます。そこで「月払いもあるでしょう」と振ると、0円プランの説明をようやく始めました。

 

一括払い月払い(入居金0円)のメリットとデメリットを整理してみます。

 ◎一括払いのメリット

 入居時に将来の「家賃前払い」をしているので、「入居金0円」に比べて長期間低く抑えられます。

 ▲一括払いのデメリット

 高額資金なので貯蓄残高が大きく減ります。クーリングオフは、契約日より90日を過ぎた場合は適用除外。また、短期退去は初期償却分※の返還金はありません。

  ※有料老人ホームの前払金に係る契約の問題 https://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2010/101217_kengi.html

 ◎月払い(入居金0円)のメリット

 入居を検討しやすい。入居時にかかる費用負担が一括払い比べて少ないので貯蓄額が保たれる。

 ▲月払い(入居金0円)のデメリット

 家賃は、立地や居室のグレード、医療体制などによって賃料が増額する場合もあり、毎月の支払額が高くなる。また、いつまで住み続けられるかわからないので、総額が判断しにくい。

 

☆ 「入居金0円」のからくりと損益分岐点

「重要事項契約書」に一括払いと月払いの記載があり、「損益分岐点」を計算してみました。すると総額比較では「約9年」ごろ※1に逆転します。入居が10年超で家賃支払額は「入居時一括プラン」がお得となります。多くの有料老人ホームの入居金問題はこの計算結果にたどり着きます。これがいわゆる「からくり」です。

 ※1 入居金一括プランと月払いプランを比べてみました。「約9年ごろが分岐点」です。  

  一括払いと月払いの損益分岐点の計算の例

   ○ 一括払い 1,000万円

   ○ 月払い(家賃部分のみ)月額約95,000円×12月×9年=1,026万円

 

◆ 老人ホーム施設に入居した場合のライフプランを設計し、介護や資金の計画をたてましょう。

 高齢者向けの住まいは、公的施設と民間施設に分けられ多くの種類があります。そして対象者や役割に違いがあります。公的施設は比較的費用負担が少なく、民間施設は立地・設備・サービス等の内容により費用の格差があります。

 A子さんとご家族は、当初は資金計画を5カ年計画でたてて、家賃と利用料を具体的に計算し、預貯金や家屋敷等の資産価値を評価し、ホームに入っても安心できるライフプランを設計しておきます。そして5年 目前でA子さんの「健康状態」を見て入居を継続するのか、又は他の公的施設を検討するのかのポイントで計画見直しします。「9年」を待たずに見直すのが安心に確信が持てる対策といえます。

 高齢者向け施設は数多く有り、立地的・資金的にどれを選択すればいいか悩むところですが、前もって計画を作っておけば安心できるセカンドライフとなるでしょう。

※国民生活センターHPより

  高齢期の住まいの種類の特徴  http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202103_01.pdf 

  有料老人ホームをめぐるトラブル。http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202103_03.pdf

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)   市田 雅良 CFP®

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献するこ

とを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

 

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