「老後」とは何歳からはじまるのでしょう?厚生労働省の2020年の「高齢期における社会保障における意識調査結果」では、「何歳から老後と考えるか」という問いに対して、「70歳から」と答えた方が最も多くなっています。
年金制度改正法により、2022年4月以降、老齢年金の繰り下げ請求の上限が現在の70歳から75歳に拡大され、75歳まで繰り下げをすると年金額は最大84%の増額となります。
豊かな老後を送るために必要不可欠な年金、そして気になるその受給金額。受給年齢が75歳まで拡大される年金繰り下げ受給について解説します。
◆ 「2階建て」公的年金制度
日本の公的年金制度には、国民年金と厚生年金があります。国民年金は、20歳から60歳まですべての人が加入する年金で、一方の厚生年金は、会社員や公務員として働く人が加入する年金です。国民年金に上乗せする形で厚生年金があるため、日本の公的年金制度は「2階建て」と言われています。
国民年金・厚生年金に加入(保険料を納入)し、所定の条件を満たせば、老齢年金は原則65歳以降に年金を受取ることができ、障害年金は病気やケガで障害状態になったとき、遺族年金は亡くなったときに年金を受取ることができます。
◆ 老齢年金の受給開始時期・受給額
先ほど老齢年金は原則65歳以降に年金を受取ることができると記載しましたが、年金を受取る時期(=受給開始時期)は、60歳から70歳の間で選択することが可能です。毎月の年金額は65歳から受取る場合と比べて、65歳より前に受取れば(=年金繰り上げ受給)減額され、65歳より後に受取れば(=年金繰り下げ受給)増額されます。
受給開始時期を60歳に繰り上げた場合65歳の受給額と比べ30%減額、70歳まで繰り下げた場合42%増額になります。
また、2022年4月には年金繰り下げ受給を選べる年齢の上限が70歳から75歳に 引き上げられ、75歳まで繰り下げると84%の増額になります。
受給開始時期は1ヵ月単位で選択することができ、繰り上げの場合は1ヵ月0.5%の減額(令和4年4月から0.4%)、繰り下げの場合は1ヵ月0.7%の増額になります。
◆ 繰下げのデメリットにも注意
75歳まで繰り下げると、毎年の年金額は1.84倍になりますが、繰り下げている65歳から74歳の10年間は、当然ですが年金は支給されません。例えば65歳の年金額が200万円のかたの場合、10年間で合計2000万円を受け取る事ができません。
また、配偶者が65歳になるまで支給される加給年金(注1)約39万円/年が、厚生年金を繰り下げている間は支給停止となります。
(注1)加給年金は家族手当のようなもので、配偶者が年金を受け取れる65歳になるまで、本人の厚生年金にプラスして支給される年金です。
年金額が増えると、それに伴い所得税や住民税、国民健康保険料が増えます。また、年金額が増えると医療費の窓口負担が2割(注2)、3割に増える場合があります。さらに、遺族年金は増えないことにも注意が必要です。
(注2)2021年6月4日に75歳以上の医療費の負担割合を、単身者は年収200万円以上、夫婦とも75歳以上の場合は320万円以上を、2割に引き上げる法案が可決されました。
◆ 「豊かな老後」 必要金額と不足金額
生命保険文化センターの生活保障に関する調査によると、「豊かな老後」を送るために必要な生活費の目安は平均約36万円です。また、厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、高齢者1世帯あたりの65歳から受給開始の公的年金受給額は平均約26万円(平均的サラーリマンの参考額)です。
※受給開始時期・受給増減率・受給額・「豊かな老後」不足額
◆ まとめ
「老後」の開始時期は、年齢だけではなく、本人および家族の健康・お金などから、人それぞれの状況により、その時期が変わると言えるでしょう。「豊かな老後」を送るためには、現在の家計状況、公的年金受給金額の把握したうえで、老後の必要金額を算出し、今からどのように備えるかを検討することが大切です。
「豊かな老後」を送るために、どう対応すべきか悩ましい時は、是非我々ファイナンシャル・プランナーにご相談ください。
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一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC) 左右木 伸也 AFP
KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献するこ とを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。 |
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