消費税の免税事業者は、今まさに、事業継続の岐路に立たされています。
インボイス制度導入をきっかけとして、消費税の存在意義や小規模事業者のビジネスモデル検証のタイミングに差し掛かっているのかもしれません。
◆ 消費税の基本構造確認(消費税とは?)
事業者の国内取引に対して消費税を課税するという税法です。ここで重要なのは取引している主体が「事業者」であることで、事業者でない一般消費者が行った取引(消費税を計算しなければならない取引は、自身が受け取る場合に限定すると売却行為)は対象外ということです。
しかし、ここで混乱することがあります。課税の対象者は「事業者」と言いましたが、対象者と納税義務者と税金負担者は一致していないということです。
間接税と直接税の話は学術的な話に進みそうなのでここでは省略します。
要は自分がどの立場で何を負担し、何を求められているかを整理把握することが必要です。
◆ 登録するかどうかの判定の原則
原則的には事業者は消費税の課税業者になるべきです。
消費税の免税業者であったから事業を継続できたとすれば、事業継続が国の政策に依存しているということになり、ビジネスモデルとしては独自に成立していない可能性があります。
◆ 免税業者があえて選択するときの判断基準
上述の流れでは登録を選択すべきという流れになっていますが、そうはいかないのが現実かとも思います。
図1の例で、A社があえて選択するのは、得意先B社(売上先)が納税義務者の場合で、自身が登録事業者でない場合に取引が無くなってしまう可能性がある場合です。
図1の例で、A社がインボイス制度の登録が無い場合、B社にインボイスを発行できません。そのためB社が登録事業者だった場合、B社は仕入控除ができなくなります。B社は本来300円で済んだはずの消費税が、1300円に負担が増えることになります。
A社が登録事業者で無くてもB社と取引が継続できる独自性がある事業等の場合は、免税のままでも大丈夫そうですが少数派ではないでしょうか。
図1:ぬいぐるみ取引の流れ (出典:国税庁[R4年12月免税事業者のみなさまへ]より抜粋
図1のB社のように、得意先(売上先)が一般の消費者で、その人たちは消費税を負担するが消費者自身は納税義務者ではないので、消費税納付計算上の仕入控除をする必要が無い場合は、登録しなくても良いということになるでしょう。
◆ 免税業者が登録する場合の計算方式の選択
そもそも消費税の納税義務者ではなかったということは、年間の売上は基準期間の課税売上金額が1,000万円以下ということで小規模事業者でしょうから、原則的には2種類の計算方法から選ぶことができます。
その2種類とは「一般課税方式」と「簡易課税方式」です。
ここで、損得の判断(消費税法上の益税問題)が出てきます。
インボイス制度導入当初は期限付きの軽減措置はありますが、制度の本質を判断する上で今回はそれらを無視すると、簡易課税方式を選択することが自然です。
当初から、消費税の売上規模での免税は、小規模な事業者の消費税の事務処理負担を考慮した特例でしたので、今回登録事業者になった場合はその事務処理負担は背負い難いと思われます。
簡易課税方式では売上金額の把握のみで済むので、事務処理量はそれほど増加しません。ただ、実際の損得は事業者それぞれになりますので厳密には検討は必要です。
◆ 今後の展開予想とまとめ
今回のインボイス制度は電子帳簿やマイナンバー制度とも繋がっている部分が大きく、国の管理体制がより強化される方向に進みそうです。
今後、事業を行う場合は、今以上にビジネスモデルの検証をして、納税も含めて慎重に事業計画を立てる必要がありそうです。
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一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC) 山内 晃
専門分野:
法人税、所得税、相続税等の税務全般、会計コンサルティング
主な資格:
CFP®・1級FP技能士、税理士、日本商工会議所簿記検定1級
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